山岡百介、『百物語』を執筆するために諸国を巡る隠遁者。ある雨の夜、彼の鈍感さがきっかけで、神秘的な「三人組」と出会う。詐術を得意とする御行師・又市、人形操りを操る傀儡師・お銀、鳥寄せを巧みにする模倣師・長耳。この出会いを境に、百介は次々と起こる怪奇事件に巻き込まれていく。これらの事件は、やがて彼の『百物語』の題材となっていく。
「三人組」は最初から最後まで謎に包まれており、さりげなく現れては突然消え去る。しかし、彼らが現れる場所には必ず怪しい噂がつきまとう。彼らは闇の世界に生きる者たち、あるいはこの世ならざる存在なのかもしれない(物語後半、百介が調べた資料によれば、長耳が生きていれば二百歳を超えている計算になる)。そして、折に触れて現れる京極亭。そこは「三人組」を束ねているかのようだ。黒庵、白庵という二人の老婆もまた、あらゆる場面で神秘的な影を落とす。
百介は「三人組」と共に様々な怪異を目撃する。そこに現れる化け物は、人々が通常想像するようなものではない。それは、日常を共に過ごす人々が変貌した姿なのである。人間の心には暗い側面がある。何らかの事情で自らの人間性を捨て、現実から逃げようとした時、歪んだ心が「鬼」へと変貌させる。そして、気づかぬうちに罪を重ねていく。懸念を残す展開、立ち込める恐怖の空気、飛び散る鮮血、様々な貪欲で異常な行為――それらは見る者の心に衝撃を与える。「三人組」は彼ら特有の方法で、闇に潜む罪を白日のもとに曝し、符を用いて「御行為奉」を行う。
静寂の中に響く鈴の音。又市がゆっくりと口を開く。
「正道を踏めば功成名遂、岐路に迷えば深淵に墜つ。所詮は夢幻と泡沫、闇の中に消える邪念と野心。世に残るは、ただ怪異の噂のみ」
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